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赤血球の異常形態と機序

球状赤血球、標的赤血球、涙滴赤血球…。赤血球って変な形になると特有の名前が付いたりして試験に出てくる。

病理の画像はすべてSummary of Abnormal Red Blood Cell Morphologies and Disease States | Medical Laboratoriesより拝借しています。

正常な赤血球形態

正常赤血球の病理

毛細血管などの狭い場所でも、ぐにゃっと変形して通過できるように、核やミトコンドリアは存在しない。また円盤状で両面の中心部がくぼんだ形をしていて、その部分は染まりにくいため白く抜けて見える。

球状赤血球

球状赤血球の病理

文字通り、へこんで白く抜けた部分が無くなって球状になった赤血球。疾患としては遺伝性球状赤血球症自己免疫性溶血性貧血が挙げられる。

 

遺伝性球状赤血球症

HS: hereditary spherocytosis。先天性溶血性貧血の中で最多。赤血球の膜を維持するタンパク質を作れないことで、球状に変形する。機能に問題はないが脾臓を通過するときにうまく変形できず、マクロファージに壊される(血管外溶血) ⇒貧血・黄疸・脾腫がみられる。治療は脾摘

 

自己免疫性溶血性貧血

AIHA: autoimmune hemolytic anemia。10~30歳と60歳に好発。赤血球膜にIgG型の自己抗体が結合。血管内では何も起こらないが、脾臓を通過する際にこれまたマクロファージに異常が見つけられる。マクロファージは付着した抗体を剥ぎ取ろうとするが、一緒に赤血球の膜も一部取ってしまうため、小型の球状赤血球ができる。さらに削られると溶血する(血管外溶血)⇒HS同様、貧血・黄疸・脾腫がみられる。治療は副腎皮質ステロイド、ダメなら免疫抑制剤・脾摘。

標的赤血球

標的赤血球の病理

赤血球の中心部が厚く、その周りが薄い。赤血球の体積に対して表面積が過剰となる場合に起きる。覚えておくべきはヘモグロビンの体積が小さくなるサラセミア

サラセミア

ヘモグロビンは鉄を含むポルフィリン環であるヘムを、4つのペプチド鎖から作られるグロビンが取り囲んでできる。サラセミアではそのグロビンを遺伝子異常によりうまく作れず、不安定で小さなヘモグロビンが出来る⇒脾臓で破壊される(血管外溶血)、あるいはそれ以前に骨髄で処理される(無効造血)

涙滴赤血球

涙滴赤血球の病理

原因としては、髄外造血がある。なんらかの原因で骨髄での造血ができなくなった場合、肝臓・脾臓で代わりに造血を行うことがある。すると骨髄で存在していた未熟な血球を出さないフィルターが無いため、奇形の赤血球が末梢血にもみられるようになる。代表的なのが骨髄線維症。この病気の詳細はMDSとMPNの違い - Things in the closetへ。

破砕赤血球

破砕赤血球の病理

 赤血球破砕症候群とも。文字通り赤血球が機械的・物理的に破壊される。

人工弁置換術後

赤血球が人工弁に衝突して砕ける。

 

DIC

播種性血管内凝固症候群: disseminated intravascular congulation。様々な理由(悪性腫瘍・敗血症など)で凝固系が亢進、細小血管内に血栓が生じる。この血栓に赤血球がぶつかって破砕する。さらに血栓を溶かすために線溶系も亢進するため、血小板減少に加えPT, APTT延長、フィブリノゲン低下などが見られる。

 

血栓性血小板減少性紫斑病

TTP: thrombotic thrombocytopenic purpura。これも細小血管に小さな血栓ができ、赤血球がぶつかる。原因はvon Willebrand因子(VWF)分解酵素の異常。VWFは、傷害された血管内皮と血小板を粘着させる役割を持つため、分解されず大きいままだと勝手に血小板がくっついてきて、血栓を作ってしまう。血流阻害のために腎機能神経症状が出るのが特徴。また、血小板は減少するが、凝固・線溶系(PT, APTT, フィブリノゲン)などは正常

溶血性尿毒素症候群

HUS:hemolytic uremic syndrome。小児の腸管出血性大腸菌の合併症として生じる。ベロ毒素が腎臓の血管内皮を傷害し、分解されないままのVWFが分泌されてしまう。検査所見はTTPと同じだが、神経症状はほとんど見られないのが特徴。

<参考>

STEP 内科2 感染症・血液 第3版


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