赤沈とは
試験管の中に血液を入れると、赤血球が凝集(連銭形成)して勝手に落ちていく。試験管内で血球が沈んでいく速さを調べる検査が赤沈(赤血球沈降速度)。英語だとESR(Erythrocyte Sedimentation Rate)。基準値(正常値)は1時間値で男性10mm以下、女性15mm以下。
赤沈の亢進・遅延(低下)を考えるには、まず物質の帯電を考える必要がある(下図)。
亢進する原因
感染・膠原病・悪性腫瘍
赤血球膜は負に帯電しているが、フィブリノゲンやγグロブリンは正に帯電している。これらの量が増えるとプラスの電荷が赤血球を引き寄せるため、凝集しやすくなる。よって、炎症性疾患である感染・膠原病・悪性腫瘍では赤沈↑。
貧血
赤血球が連銭形成して落ちてくる際に、互いに反発しもみ合うことで沈降速度が鈍る。つまり、もみ合う赤血球が少ない状態(=貧血)では、反発が少ないため赤沈↑。
低アルブミン血症
アルブミンは負に帯電しているため、アルブミンが減る病態 (肝硬変やネフローゼ症候群) だと、貧血の時と同様反発するものが減るので、赤沈↑。
妊娠
循環血漿量の増加によって希釈されてHbが減少、またアルブミン値も同様の機序で低下するため、赤沈は亢進する。さらに分娩時の出血に備えて凝固系が亢進=フィブリノゲンが増加していることと、胎児へIgGを供給するためにグロブリン値が上昇していることも原因となる。
遅延する原因
DIC
DICではフィブリノゲンが減るため赤血球を引き寄せにくくなり、沈みづらくなるため、赤沈↓。
多血症・脱水
貧血と反対。赤血球が多くて反発しもみ合うため赤沈↓。
<参考>電気泳動によるタンパク質分画
プラス側にアルブミン、マイナス側にγグロブリンがある。
http://iden-gaku.link/category3/entry80.htmlより
<参考>
異常値の出るメカニズム 第6版