一般的に炎症反応が起きると白血球は増加するが、代表的な作用に抗炎症作用・免疫抑制作用をもつステロイドを投与した際にもなぜか血中の白血球増多が見られ、10000から多いときは20000/μLくらいまで上昇する。これには白血球の血管外遊出が関わってくる。
白血球の血管外遊出
体のどこかで炎症があった際、骨髄で産生され血中を巡っている白血球 (好中球)は血管から出て炎症部位の組織中へ出ていく必要がある。これにはいくつかのステップがある (ここは飛ばしても可です)。
http://www.bloodjournal.org/content/128/4/479?sso-checked=trueより
血管内皮細胞の活性化
病原体が侵入した部位で白血球や他の細胞がサイトカインを産生し、血管内皮細胞を刺激する
→表面にセレクチンと呼ばれる接着分子を発現、またIL-8などのケモカインを産生して白血球を活性化する
ローリング接着
血管内皮上に発現したセレクチンは白血球上のセレクチン受容体と結合
→白血球は減速し、血管内皮細胞の表面にローリングする (まだ弱い接着)
強い接着
今度は白血球上に存在するインテグリンという接着分子が、血管内皮細胞上のICAM-1 (CD54)と結合する。
血管外遊出
ケモカインに誘導され、血管内皮細胞の間を通り抜ける。
ステロイドで白血球増多
白血球増多で実際に増えている分画は好中球で、リンパ球などは減少している。ステロイドは好中球と血管内皮細胞に作用して、好中球が血管壁に接着し、血管外へ遊出することを阻害する。すると好中球は血中から炎症部位へ移行することができず、血中でうろうろすることになる(易感染性にもつながる)。これとともに骨髄での好中球の放出促進や、アポトーシスの抑制が重なり、血中の好中球が上昇する。
ステロイドでリンパ球・好酸球は減少
好中球が増える一方で、リンパ球や好酸球は減少している。それぞれ足し合わすと結局白血球は増加する。
リンパ球は血中から、リンパ節や脾臓、骨髄などへの再分布が主な原因とされる。
好酸球は直接的に、あるいはIL-5の抑制を介してアポトーシスが誘導されることが主な原因。IL-5は好酸球の分化や、骨髄から血中への誘導に働くサイトカインなので、この抑制によって血中の好酸球は減少する。
<参考>
uptodate: Glucocorticoid effects on the immune system
イラストレイテッド 免疫学 原書第2版
病気がみえるvol.3 糖尿病・代謝・内分泌 第4版