それぞれが色んな所で交叉したりしなかったりするので、面倒くさくて苦手なところ。大きく分けて4種類の伝導路を覚えておけばとりあえず何とかなる?
皮質脊髄路(錐体路)
「大脳皮質」から「脊髄」へ行くルート。つまり下行性の伝導路で、随意運動を伝える。
① 大脳皮質の一次運動野から上位運動ニューロンが出る
② 内包後脚・中脳の大脳脚を通って延髄の錐体へ
③ 延髄下部の錐体交叉で対側へ
④ 脊髄の側索を下行し、前角で下位運動ニューロンとシナプスを形成
※正確には皮質脊髄路には、外側皮質脊髄路と前皮質脊髄路の2種類があって、錐体路として有名な、延髄の錐体で交叉するやつは外側の方。一方、前皮質脊髄路では、錐体では交叉せずそのまま下行して、同側の脊髄前索を通って脊髄の各レベルで交叉する。こいつは体幹や近位筋の運動を支配しているが、臨床的には外側皮質脊髄路より重要度で劣るうえ、試験にも出なさそうなので、割愛。もう少し詳しい図はhttp://blog.livedoor.jp/mentalot/archives/4354521.htmlにもあります
脊髄視床路
「脊髄」から「視床」を通って大脳皮質へ。2種類あって、外側脊髄視床路は温痛覚を、前脊髄視床路は粗大な触覚を伝える。両方ともだいたい同じ経路。
温痛覚
粗大な触覚
何かが触れているのは分かるが、はっきりした部位や性状などは分からない大まかな感覚。より繊細な識別性触覚は次の後索-内側毛帯路で出てくる。
外側脊髄視床路の場合。前脊髄視床路では、脊髄を上行する位置が少し前方になる。
① 皮膚や粘膜の感覚受容器が温痛覚を受容
② 1次ニューロンは後根神経節を通って後角で2次ニューロンとシナプス
③ 2次ニューロンはそのまま(脊髄のレベルで)対側へ交叉する
④ 上行して脳幹を通って視床で3次ニューロンとシナプス
⑤ 大脳皮質の体性感覚野へ
後索-内側毛帯路
単に後索路と書いてあることも。前述の識別性触覚と、(意識できる)深部感覚を伝える。ゴロ合わせは「後ろの毛を深く触る」(後ろ=後索、毛=内側毛帯、深く=深部感覚、触る=触覚。深く触っているのでより精密な識別性触覚。)
(意識できる)深部感覚
振動覚や位置覚。筋・関節・皮下組織などの受容器から伝えられる感覚で、位置覚では関節の曲がり具合などからその位置や動きを察知する。
識別性触覚
触れている部位や、物体の性状がわかるような精密な触覚。「人差し指でコインを触っている」など。
① 皮膚・関節・筋などで識別性触覚と深部感覚を受容
② 1次ニューロンは脊髄後根から同側の後索を通って上行
③ 延髄下部の後索核で2次ニューロンとシナプス
④ 2次ニューロンは延髄下部で交叉 (decussation)し、内側毛帯 (medial lemniscus)を通って上行
⑤ 視床で3次ニューロンとシナプス
⑤ 大脳皮質の体性感覚野へ
※ちなみに後索には薄束 (fasciculus gracilis)と楔状束 (fasciculus cuneatus)の2種類があって、薄束は下肢、楔状束は上肢というように分かれている。
脊髄小脳路
意識できない深部感覚を伝える。脊髄から小脳に行くため、大脳皮質による認知が行われない (=意識できない)、と考えればわかりやすいかも。
意識できない深部感覚
筋紡錘や腱紡錘から伝わる、筋の長さや緊張度合いのこと。小脳が障害されてこの機能が損なわれると、姿勢の保持や歩行の調節などができなくなり、酩酊歩行と呼ばれる状態になる。
*1
筋紡錘や腱紡錘から入った刺激は大脳を経ずに小脳(虫部)に伝えられる。上肢と下肢で経路が異なるが、同側を通ることだけ覚えておけば多分OK。
<画像出典>
解剖図はhttp://www.fpnotebook.com/mobile/Neuro/Anatomy/index.htmより
<参考>
病気がみえる vol.7 脳・神経 第1版