原始反射
新生児や早期乳児では大脳皮質が未発達なため、随意運動よりも脊髄や脳幹レベルの行動(つまり反射)が優位となっている。この時期には成人には見られない反射がみられ、原始反射と呼ばれる。これは寝返りや起立などの随意運動の準備段階で、生後しばらくすると徐々に消失する=大脳皮質からの抑制性の命令が届くようになる(大体3~6ヶ月)。逆に原始反射がなかなか消失しない場合は、反射を抑制する大脳が未発達であることが示唆され、脳性麻痺など、中枢神経系の障害を疑う。
手掌把握反射
palmer grasp relex。手掌を指先などで押し付けると握りしめる。3, 4ヶ月で消失し、ものを掴めるようになる。
*1
足底把握反射
plantar grasp reflex。足底を指などで押すと足の指が屈曲する。9, 10ヶ月で消失し、つかまり立ちができるようになる。
2つの把握反射を示した下の動画もわかりやすいです。
Moro反射
仰向けにして頭を30°ほど上げておき、急に落とすと、腕を伸ばし、外転したのち (第1相)、内転・屈曲させる (第2相)。首がすわる4ヶ月ごろに消失。母体から落下しそうな時に近くのものに掴まろうとする反射。
*2
吸啜反射
口の中に指などを入れると吸い付く。
*3
追っかけ反射(探索反射)
指で赤ちゃんの口唇の近くを刺激すると頭を回して追いかける。
吸啜反射と探索反射はともに5, 6ヶ月で消失=離乳食を始めるくらい
*4
非対称性緊張性頸反射
Asymmetrical Tonic Neck Reflex (ATNR)。仰向けで体を動かさずに、頭だけ左に回すと、左の上下肢は伸展し、右の上下肢は屈曲する(フェンシングスタイル)。5, 6ヶ月で消失し、寝返りを打てるようになる。
*5
背反射
ギャラン反射 (Galant reflex)とも。うつ伏せに抱いた状態で脊柱の脇を撫でるように摩り下ろすと、同側に体が傾く。2, 3ヶ月で消失。
*6
歩行反射
stepping reflex。赤ちゃんを手で支えて立たせると下肢を交互に動かす。1ヶ月で消失。
*1
病的反射
Babinski反射
足底の小指側を擦過すると、母趾は背屈し、指が開扇する(指の間隔が広がる)。成人だと錐体路障害を疑う異常所見だが、1〜2歳まではまだ抑制が働かないため出てもOK。
*7
姿勢反射
体の位置が変化した時に、それを元に戻そうとする反射。ここで出てくる2つは出生時にはまだ見られない。
Landau反射
うつ伏せで水平に抱き、頭を挙げると体幹・下肢が伸展し、頭を屈曲すると体幹・下肢が屈曲する。ハイハイやおすわりに役立つ反射で、3ヶ月ころから出現し、2歳を過ぎると消失。「サ (3ヶ月)ツ (2歳)に乱暴 (Landau)」
パラシュート反射
腹臥位で抱きかかえながら持ち上げる→頭を急に下げると両腕を伸ばし、手掌を開く=頭からの墜落を防ぐような反射。7〜9ヶ月頃現れ、一生持続。「パ(8)ラシュート」あるいは「九 (9)死に一生パラシュート」
*8
<画像出典>
*1 Movement and reflexes - AboutKidsHealth
*2 Moro reflex: MedlinePlus Medical Encyclopedia Image
*3 Thumb sucking: Today's Dentist
*5 Asymmetrical Tonic Neck Reflex: UpToDate
*6 Galant Reflex | Ashley Arbuckle | Flickr
*7 The plantar reflex - Babinski's sign ~ Medicine Hack
*8 Major Components of Appraisal
<参考>
STEP 小児科 第3版
uptodate