グラム染色の機序、および染色性の覚え方・染まらない細菌。グラム陽性桿菌のゴロなんかはもう少し良いのがあったら教えてください。
細菌の細胞壁
グラム陽性菌
一層の厚いペプチドグリカン層からなる
グラム陰性菌
ペプチドグリカン層は薄く結合も疎で、外側にリポ多糖などからなる外膜が存在する
グラム染色の機序
(1) クリスタル紫
→全て染まる
(2) ルゴール液(ヨード)
→紫色素を安定化(不溶化)する
(3) 95%エタノール
→脱色 (この時点で陽性菌は紫、陰性菌は無色)
(4) サフラニン
→脱色されたものを赤染
☆グラム陰性菌が持つ外膜はアルコールで容易に壊れ、ペプチドグリカン層も薄いため速やかに漏出し脱色される→赤で染まる
☆グラム陽性菌は厚いため脱色されない→紫で染まる
グラム染色性の覚え方
グラム染色に対する細菌の染色性は、前述の陰性・陽性(・それ以外)の他に、球状か桿状=棒状かで分けられる。よって、大きく陽性球菌・陽性桿菌・陰性球菌・陰性桿菌に分類される。イメージでは下のような感じ。
グラム陽性球菌…普通に覚える!
ブドウ球菌・レンサ球菌・肺炎球菌・腸球菌
有名な菌ばかりで、しかも少ないのでそのまま覚える。大腸菌は陰性桿菌なので注意。
グラム陽性桿菌…好気性+嫌気性
好気性…「CCテリア」
(C=炭素) 炭疽菌 Bacillus anthracis
(C)セレウス菌 Bacillus cereus
(テリア) リステリア Listeria monocytogenes
(テリア) ジフテリア Corynebacterium diphtheriae
嫌気性…クロストリジウム属
「黒すぎ暴雨風」
(黒す) クロストリジウム
→(ぎ) 偽膜性大腸炎 Clostridium difficile
(暴) ボツリヌス菌 botulinum
(風) 破傷風菌 C. tetani
(雨) ウェルシュ菌 C. perfrigens
グラム陰性球菌
「一休も随分淋しげ」
→(一休) グラム陰性球菌
(も) モラクセラ
(随) 髄膜炎菌
(分) ブランハメラ菌
(淋) 淋菌
グラム陰性桿菌…その他大勢!
大腸菌、緑膿菌、インフルエンザ菌、コレラ菌…その他もろもろ!
実際にはこんな感じで見える。
紫の陽性球菌が黄色ブドウ球菌で、赤の陰性桿菌が大腸菌。
染まらない細菌
マイコバクテリウム属(結核菌・NTM・らい菌)
…細胞壁に疎水性のろう脂質を含むため、普通の染色では染まらない
→Ziehl-Neelsen染色と呼ばれる方法を用いる。まず特殊な色素で染色→塩酸で脱色。普通の細菌は塩酸で色が落ちるが、この菌はろう脂質と色素が結合するため脱色されず(抗酸菌の由来) 、赤く染まる
http://www.atmph.org/article.asp?issn=1755-6783;year=2011;volume=4;issue=2;spage=110;epage=112より
スピロヘータ目(らせん菌)
…グラム陰性だが、染まりにくい
→スピロヘータ科=トレポネーマ属(梅毒)+ボレリア属(回帰熱、ライム病)
→レプトスピラ科=レプトスピラ属(weil病)
レジオネラ
グラム陰性桿菌だが、細胞内寄生性なので染まりにくい
→ヒメネス染色
マイコプラズマ
そもそも細胞壁がない
リケッチア・クラミジア
細胞壁はあるが偏性細胞内寄生性なので染まらない
<参考>
南江堂 医科細菌学 改訂第4版