学校ではあまり習わないけど、臨床の場に出ると現れる単位にγ(ガンマ)というものがある。聞きなれない上に、γ=µg/kg/minと、見た感じもよく分からない。というわけで、このガンマ計算についてまとめてみます。
γとは?
薬剤の投与スピードを示す単位で、µg/kg/minという単位を1文字であらわしたもの。これはつまり、「体重1kgあたり、1分につき1µgの薬剤を投与する」ということ。もし1分当たり3mlの薬剤を投与しようとしても、体重70kgの成人男性と体重1kgの赤ちゃんとでは薬の効きが当然変わってしまう。そのため、体重を計算に入れることで、成人でも赤ちゃんでも同様の効果が得られるようにしている。
γ計算の方法
「体重50kgの人に薬剤を1γ投与する」というときは、50µg/minつまり、1分当たり50µg投与すればいい、終わり!…とは残念ながらならない…。臨床ではµgもminも単位として使わないため、普段使う単位に換算しなければならない。(下が実際に薬剤を持続投与する際に使われるシリンジポンプだが、3.0のあとの単位がmL/hrになっている!)
http://kikukiku.cocolog-nifty.com/kikukiku/2009/11/post-2529.htmlより
µg/kg/minからmg/hrへ
1γ=1µg/kg/min
=0.001 mg/kg/min
=体重×0.001 mg/min
=体重×0.001×60 mg/hr
=体重×0.06 mg/hr
薬剤の種類・濃度とは関係ないただの式変形なので、これはとりあえず結果だけ覚える!例えば体重50kgの人なら1γ=3mg/hrだし、体重15kgなら1γ=0.9mg/hrになる。(6かけて100で割るという風にやると考えやすい)
mg/hrからmL/hrへ
mL/hrを計算するためにはその薬液の濃度が必要になる。
例えば薬液が2mg/mLなら、1mlの中に薬剤が2mg入っていることになるので
1γ=体重×0.06mg/hr
=体重×0.06mL÷2/hr
=体重×0.03mL/hr
となる。
練習問題
問1
体重50kgの患者に、イノバン®注0.3%シリンジ(1シリンジ50mL中にドパミンが150mg)を1γ投与したい。何mL/hr投与すればよいか。
問2
体重70kgの患者に、アルチバ®静注用2mgを生食10mLで溶解し、0.4γで投与したい。何mL/hr投与すればよいか。
問3
体重40kgの患者に、ノルアドレナリンが3.0mL/hr投与されている。ノルアドレナリン注1mgは2A(アンプル)を生食で50mLに希釈している場合、何γ投与していることになるか。
解答
問1
体重50kgのときの1γ=0.06×50mg/hr=3mg/hr。
50mL中にドパミンが150mg入っているので、3mg/hrで投与したいときは3(mg/hr)×50(mL)/150(mg)=1mL/hr。よって1γ=1mL/hr
問2
体重70kgのときの1γ=0.06×70mg/hr=4.2mg/hr。
よって0.4γ=1.68mg/hr
10mL中に2mgの薬剤が入っているので、0.4γ=1.68×10/2 mL/hr=8.4mL/hr
問3
体重40kgのときの1γ=0.06×40mg/hr=2.4mg/hr。
薬液50mL中にノルアドレナリンが2mg入っているので、1γ=2.4×50/2 mL/hr=60mL/hr
よって現在のγは、3/60γ=0.05γ
<参考>