前記事:胃切除後の再建法でも書いたように、Billroth II法の再建術を行うと、吻合部への張力が軽減される一方で、輸入脚症候群や盲管症候群 (blind loop syndrome)といった合併症が起きる可能性がある (現在では1%前後の確率らしいが)。また、Roux-en-Y法でも発生しうるが、Billroth IIより頻度はかなり少ない。
輸入脚/輸出脚とは?
どちらも胃切除後の再建で作成され得るもので、輸入脚は十二指腸の断端から吻合部に至るまでの部分で、輸出脚は吻合部以降の空腸を指す(おそらく胆汁・膵液を輸入脚から入れてきて食物と合わせて、輸出脚へ出す、という意味だと思われる)。
輸入脚症候群
輸入脚の屈曲・捻転や、吻合部狭窄などによって輸入脚に通過障害を起こす病態。胆汁や膵液がうっ帯して、輸入脚の内圧が上昇する。この内圧が通過障害に打ち勝つと胆汁や膵液が胃に逆流し、腹痛・(胆汁性の)嘔吐をきたす。
ちなみにここで説明したのは「慢性」輸入脚症候群のことで、急性のものも存在する。急性の場合輸入脚が完全閉塞してしまい、胆汁・膵液はうっ帯したままになる。そのため、無胆汁性の嘔吐をきたし、さらには輸入脚の壊死や穿孔をきたすこともある。
治療としては、
食事療法:低脂肪食によって胆汁・膵液を減少させる
再手術:Braun(ブラウン)吻合、捻転・屈曲を戻す、再建の変更(roux-en-Y)
などが挙げられる。
Braun吻合
Billroth IIのあとに行われる吻合法で、上図のように輸入脚と輸出脚とを繋げることで胆汁や膵液が排出しやすくなり、輸入脚症候群が起きなくなる。
Postsurgical Endoscopic Anatomy | Clinical Gateより
盲管症候群 (blind loop syndrome)
盲係蹄症候群・blind loop syndromeとも。盲管というのは行き止まりの腸管のことで、billroth II法における輸入脚も盲管となる (盲腸や虫垂も盲管といえる。下図参照)。ここで腸の内容物が停滞するなどして腸内細菌が異常繁殖する。その結果、胆汁酸の脱抱合→脂肪・脂溶性ビタミンの吸収阻害や、ビタミンB12の消費→欠乏が起こる。症状としては、腹痛・体重減少・脂肪便・ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血など。
ビタミンB12については下記事もあります。
参考:
http://www.jikeirad.jp/syourei/kensyui/20140703up/02.pdf
STEP 消化器外科・小児外科 第2版
カラー版 消化器病学