ヘルニア(hernia)はラテン語で「脱出」という意味で、先天的・後天的にできた組織間の裂隙に、臓器や組織が脱出した状態を指す。その中でも腹部のヘルニアは外ヘルニアと内ヘルニアに分けられる。
外ヘルニア
腹腔内臓器が腹膜外に脱出したもの。体表から触れることができるのが特徴だが、大部分の閉鎖孔ヘルニアは見えない。
鼠径部ヘルニア
内鼠径ヘルニア、外鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア。これらについては下の記事を参照。
骨盤ヘルニア
閉鎖孔ヘルニアが有名。
…高齢の痩せた女性に多く、寛骨の閉鎖孔から腸管が脱出する。
Types of Hernia and Managementより
腹壁ヘルニア
臍ヘルニア、正中腹壁(白線)ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアなど。腹壁の脆弱な部分から脱出。
内ヘルニア
腹腔内臓器が腹腔内に生じた間隙にはまり込んだもの。外ヘルニアよりもまれ。
網嚢孔ヘルニア(Winslow孔ヘルニア)
胃の裏側にある網嚢孔という部分から腸管が脱出。
Foramen Winslow hernia - Scientific Figure on ResearchGateより
傍十二指腸ヘルニア
内ヘルニアの約半数。十二指腸空腸移行部の腹膜欠損部から脱出する。
left paraduodenal hernia - Scientific Figure on ResearchGateより
腸管膜裂孔ヘルニア
横行結腸間膜ヘルニア・S状結腸間膜ヘルニアなど、腸管膜に出来た隙間に腸が入り込んだもの。
食道裂孔ヘルニア
横隔膜ヘルニアの中では一番頻度が高い。横隔膜に空いている穴のうち、食道が通っている部分から胃が脱出する。他の横隔膜ヘルニアとしては、Bochdalek孔ヘルニアやMorgagni(モルガニ)孔ヘルニアなどがある。
最後に医師国家試験の過去問を。
109A8
内ヘルニアはどれか。
a, 大腿ヘルニア
b, 内鼠径ヘルニア
c, 閉鎖孔ヘルニア
d, 網嚢孔ヘルニア
e, 腹壁瘢痕ヘルニア
答えはd。